研究開発、商品開発、経営、法務などの会議では、議題そのものが社外秘です。こうした会議をオンラインで開こうとすると、「Web会議サービスに会話内容を預けてよいのか」という疑問が出てきます。
Google Meet、Zoom、TeamsなどのWeb会議サービスは、提供事業者のサーバーで音声や映像を中継・処理する形が基本です。ここで確認したいのは、特定の事業者が会議を盗聴しているという話ではありません。利用者から見れば、会話の処理に自社以外の設備と運用主体が関わり、その技術的な取り扱いは各社の利用規約やプライバシーポリシーにも依存する、という点です。
一般的な社内会議なら、この方式の利便性は高いでしょう。一方、「会議音声を自社管理下の設備から出したくない」「外部サービスの運用方針に依存する範囲を減らしたい」という要件がある場合、Web会議サービスの中から製品を選ぶだけでは候補を絞り切れません。通信方式そのものを選び直す必要があります。
機密会議で考えられる3つの方式
E2EE対応のWeb会議
第一の候補は、E2EE、つまりエンドツーエンド暗号化に対応するWeb会議サービスやモードです。参加者間の通信を暗号化し、途中の設備から会話内容を扱いにくくする考え方です。
ただし、E2EEの方式、利用条件、利用できる機能はサービスごとに異なります。「E2EE対応」という表示だけで、自社が必要とする会議機能をそのまま利用できるとは限りません。採用する場合は、どの通信が対象になるのか、どのモードで有効になるのか、機能制限があるのかを個別に確認する必要があります。
閉域網・専用線
第二の候補は、会議に使う通信経路を閉域網や専用線の中に置く方法です。通信経路を限定し、一般的なインターネット経由の通信とは分けて扱う考え方です。
この方式を検討する場合も、回線だけを見れば十分とは限りません。会議音声を最終的にどの機器が処理するのか、その機器を誰が管理するのかまで確認する必要があります。経路を限定することと、会議処理の管理主体を自社に置くことは、それぞれ確認しておきたい事項です。
社内設置PBXによる電話会議
第三の候補が、社内設置型IP-PBXの会議機能を使う方法です。電話会議はWeb会議が普及する以前から企業で使われてきた方式で、参加者は電話機や内線端末から音声で会議に参加します。
現在のIP-PBXでも、参加者の音声をPBX本体で混ぜ合わせる会議機能を構成できます。PBX本体を社内に設置している場合、内線どうしの会議であれば、音声の処理を自社管理下の設備の中で完結させることができます。
社内設置PBXは「電話会議」の現代版
Web会議が当たり前になった現在では、会議といえばカメラ映像、画面共有、チャットなどを含むサービスを想像しがちです。しかし、すべての会議で映像が必要とは限りません。内容を口頭で確認し、意思決定するだけなら、音声だけで成立する場面もあります。
社内設置PBXの電話会議は、そうした会議に対して、従来の電話会議をIP化した選択肢として考えられます。
仕組みは比較的明確です。複数の参加者から届いた音声をPBX本体が受け取り、それぞれの音声をミキシングして各参加者へ返します。PBXが自社設備として設置され、参加者も社内の内線から接続しているのであれば、そのミキシング処理を外部のWeb会議事業者へ委ねる必要はありません。
この方式が適するかどうかは、映像や画面共有が不要であること、自社でPBXとネットワークを管理できること、会議音声の処理場所を自社設備に限定したいこと、といった要件によって決まります。一般的なWeb会議を置き換えるための万能な方式ではありません。
PBX会議にも限界がある
社内設置PBXによる電話会議を検討する際は、「社内に置けば安全」と単純化しないことが必要です。
まず、PBX会議はエンドツーエンド暗号化ではありません。PBX本体が参加者の音声を受け取り、復号したうえでミキシングするためです。ここでの守り方は、音声を処理する設備と通信経路をどこに置き、誰が管理するかを定めることです。通信の途中で一切復号しないE2EEとは考え方が異なります。
また、外線から参加する場合は条件が変わります。一般の電話網から会議へ接続する区間は通信事業者の網を通ります。そのため、「PBXが社内にあるから、参加者全員の通信が自社設備だけで完結する」とは言えません。自社管理下に限定したい範囲を決め、内線参加だけにするのか、外線参加も認めるのかを要件として整理する必要があります。
さらに、PBXを社内に設置しても、社内ネットワーク自体の対策が不要になるわけではありません。PBX、電話機、ネットワーク機器をどのように管理するかは別途検討が必要です。会議方式の選定と社内ネットワークの管理は、あわせて考える必要があります。
内線区間はSIP-TLSとSRTPで暗号化できる
IP-PBXでは、内線区間の通信を暗号化する方法があります。ここでは、通話を開始・終了するための呼制御と、実際の音声データを分けて考えます。
呼制御にはSIPという仕組みが使われ、その通信をTLSで保護する方式がSIP-TLSです。一方、実際の音声データにはRTPが使われ、その音声を暗号化する方式がSRTPです。
つまり、IP-PBXの内線通信では、呼制御をSIP-TLS、音声をSRTPで暗号化する構成を取ることができます。PBX会議そのものはE2EEではありませんが、内線端末からPBXまでの通信区間を暗号化し、その先の音声処理を自社管理下のPBXで行う設計は可能です。
SIP-TLSとSRTPの仕組みは、クラウドPBXのセキュリティで確認したい「音声の暗号化」 で詳しく解説しています。
会議音声を自社管理下に置きたい組織の選択肢
機密会議の方法を選ぶとき、「どのWeb会議サービスを選ぶか」という比較だけでは候補が限定されます。E2EE対応のWeb会議、閉域網・専用線、社内設置PBXによる電話会議では、それぞれ管理できる範囲や通信経路が異なります。
社内設置PBXの電話会議が候補になるのは、映像や画面共有を必要とせず、少人数の音声会議について、音声処理を自社管理下の設備で行いたい組織です。一方、外線参加を認めれば通信事業者の網を通る区間が生じ、PBX内部では音声を復号してミキシングします。この前提を理解したうえで、自社の要件に合うかを判断する必要があります。
VoiceLine PBX は、社内設置・買い切りのIP-PBXです。3者通話・会議は標準構成ではなく、個別対応・将来オプションとして扱っています。会議音声をどこで処理したいか、参加者を内線に限定するかといった要件がある場合は、その条件を整理したうえで お問い合わせ からご相談ください。